ハンドクリーム
カサカサになった手を守るためにハンドクリームをにゅにゅにゅと押しだす。
にゅにゅにゅと出てきたクリームをみて、ふとこれって食べられるのかしらと思ってしまった。
最近は飲む日焼け止めなんてのもあるくらいだし、飲むハンドクリームがあってもいいのではないかなんて。
そしたら手だけじゃなくてかかととかその他諸々日々のストレスと戦うために固くなってしまった部分も柔らかくなってくれたりしないかしら。
通り道にあった美容室の看板に、美容へのケアは10年後の自分への投資!と書いてあった。
なるほど確かに明日明後日に結果は出なくとも未来の自分の見た目にはよっぽど影響があるのかもしれません。
よくわかんないけど。
しかしまあ、某アニメ作品の主人公は1000年先の地球のことを考えて人類を宇宙へコロナイズさせようとしていて、生活苦の地球人には「暇なんだね」と言われる始末。
生活苦ってほどではないにせよ身も心もかつかつな私なのに、世の人たちは10年先の自分のために今日を投資しているんだろうか。
すごくない?余裕あるねえ。心に。
それとも美容、楽しいんだろうか。ずっときれいでいたいという気持ちであればいたいほどわかるけど、今日と明日くらいで精一杯なのです大変なのです。怠惰とは言わないでください。なかなかこれでも頑張っております。
でも、ハンドクリームや自分のカサカサになってきた手をみていつも思い出すことがある。
昔イギリスに留学していたときに訪れたホームステイ先の奥様のことだ。(留学自体は寮生活だったけど民間のホームステイプログラムのようなものを利用したのです。奥様と呼んでいるのは訪れたホームが典型的なイギリスのミドルクラスのお家だったからです。)
あんまり文化的に握手とかしてこなかったから、ホームステイが終わるときに握手して、はじめて奥様の手がガーデニングや多分洗い物や掃除などでとても荒れていて、若さなんてなんにも感じなかった。
だけど、その手と握手したとき、こういう人生を送りたい、この手になった自分になりたいって思った。
確かに、言ってしまえばボロボロだし、いけおば(イケてるおばさま)に言わせれば美容へのケアが足りないのかもしれない。
でもそれでも、あの手に人生や生活、あの人の歴史が全部詰まっていた。
ああなりたい。ああいう人になりたい。